「ちょっと、聞きたいことあんだけど……いいか?」
テーブルの上を片付け、立ち去ろうとする眉村を吾郎は呼び止めた。
「ここじゃ話しずれぇから、場所変えようぜ。」
二人は連れ立って屋上に来ていた。
さすがに四月と言えど、夜は肌寒い。
「聞きたいことって、なんだ?」
「単刀直入に聞くけど、眉村が俺のこと好きだって気づいたのいつだ?」
思わぬ質問に、彼は眉を顰めた。
「くだらん。そんなこと聞いてどうするつもりだ」
「いいから、答えろよ」
相変わらずの横柄な態度にいささかムッとしたが、答えてやることにした。
「ハッキリしたことは覚えてないが。歓迎試合が終わってしばらくたってからだと思う、気がついたら好きになってた」
「そっか……」
「なんだ、そんなこと聞いてどうするんだ? 俺の気持ちには答えられないって言ってただろ」
彼の言葉に吾郎は眉間に眉を寄せ、前髪をかきあげる。
「そうなんだけど。俺今、自分の気持ちがよく判らなくなってんだ」
「なんだって?」
「寿也のこと、好きなのは変わらねぇ。だけどお前と二人っきりになると、ドキドキして俺、変なんだ」
吾郎の言葉に眉村は目を見張った。
夢でも見ているのではないかと我が耳を疑う。
「眉村に対するこの気持ちが恋愛感情なのか、どうなのかは正直よくわかんねぇ。でも、キライじゃないと思う」
「茂野……」
眉村の手は気がつくと吾郎を抱きしめていた。
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