『どわわわわぁあっ!!!』
声にならない声を上げ、ぎゅっと目をつぶり歯を食いしばっている姿はとても見ものだった。
「吾郎君の顔、すっごく可笑しかったよ」
「笑うなよ。すっげぇ怖かったんだぞ」
コースター終了後、肩を震わせている寿也を恨めしそうに見るが、これに味を占めた彼はさっさと次のアトラクションへ。
フリーホールやバイキングなど絶叫系を次々に梯子する。
「ちょっと待て、寿。俺……休憩」
「あのくらいで弱音を吐くなんて、吾郎君も大したことないね」
「っせぇよ」
ベンチにへたり込んだ吾郎を見て、仕方がないなぁと呟いて、ジュースを買いにいく。
やっぱり、今日は誘ってよかった。
寿也はそう思った。
絶叫が苦手だとは意外だったが、知らなかった新しい一面がわかり嬉しくなった。
次は、なんにしようか。
寿也の視線の先に一つのアトラクションが目に入った。
「なにぃ!? お化け屋敷だと!?」
「そうだよ。せっかく来たんだから、行こうよ」
寿也の言葉に吾郎が絶句する。
彼はそういう非科学的なものを信じているわけではないが、苦手だった。
「なぁ、別のにしようぜ?」
「いいじゃないか。君ってそんなに臆病なのかい?」
意地悪くそう言われ、言葉に詰まる。
渋々中に入るが寿也の腕をぎゅっと掴んで、離さない。
寿也は、自分よりほんの少し大きな彼がこんなにおびえている姿がおかしくて、笑いを必死に堪えていた。
『う、うわわわわー!!』
数分後、お化け屋敷の中から、吾郎の悲鳴が響き渡ってきたのであった。
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