幼い弟が突然現れて、二人の身体は硬直した。
吾郎は急いではだけた衣服を整えベルトの外れたバックルを締めなおす。
寿也は明らかに動揺しやり場の無くなった手を慌てて引っ込めた。
「このお兄ちゃん、吾郎兄ちゃんのお友達なの?」
「あ、あぁそうそう。俺の友達だよ」
純真無垢な瞳で尋ねられ吾郎は目を合わせず答えた。
「ねぇ、何をして遊んでたの?」
「え、っとそれはだな、その……」
吾郎は目を白黒させながら言い訳を考える。
真吾は不思議そうに答えを待っていた。
「どうしたの、吾郎兄ちゃん?」
「そうそう、兄ちゃんたちは今プロレスごっこしてたんだ」
『プロレスごっこ!?』
吾郎の答えに寿也と真吾の声が同時に響く。
「今、兄ちゃんたちの学校で流行ってるんだ……な、なぁ寿也?」
肘で驚いた顔をしている寿也を突付く。
「えっ、あ、そうそう」
慌てて寿也も相槌を打った。
「ふーん。そうなの。あっ、ずるーい!!」
「!?」
真吾の目線の先にお菓子を発見し彼の興味はお菓子のほうへ。
「ねぇ、僕も食べていい?」
「あぁ、いいぜ食えよ」
ちょこんと座り込み嬉しそうにお菓子に手を伸ばす。
その様子に二人はホッと胸をなでおろした。
「僕、そろそろ帰るね」
「お、おい寿! まだいいじゃねぇか」
慌てて腕を掴んだが、たった今までここで何をしようとしていたか思い出し咄嗟に手を離す。
それとほぼ同時に、英毅が部屋へやって来た。
「あれ、もう帰るのかい?」
「ええ、用事を思い出したので。お邪魔しました」
ペコリと一礼すると、そそくさと階段を下りていく。
慌てて吾郎も追いかける。
「親父。ちょっと寿送ってくるから」
そういい残し、玄関へ。
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