自分の髪と違って、とても柔らかい。
「こっち来いよ」
寿也はこくんと頷いて、同じ布団の中へ。
「僕、怖かったんだ」
「あ?」
「眉村に……君を取られてしまうような、そんな気がして。」
切なそうなその顔になんと声をかけていいかわからず困惑する。
「んなわけねえじゃん。俺が好きなのは、お前だけなんだから」
そっと、寿也の手を握る。
とても冷たい手。
「ねぇ、吾郎君。さっきまであんなことしててアレなんだけど……」
「なんだよ?」
「キス、しても……いいかな?」
吾郎は答える代わりにそっと目を閉じた。
ゆっくり、輪郭をなぞるように口付けを交わす。
お互いの存在を確かめ合うように、何度も、何度も。
「どこにも行かないでよ。吾郎君」
小さな声で寿也が呟く。
それは吾郎の耳に届かないくらいの小さな声で、
「ん? 何か言ったか?」
「ううん、なんでもない」
そして再びキスをする。
少しずつ、近づく夜明け。
それは、吾郎が去ってゆく日をまた一歩早めるものだ。
永遠に朝なんて来なければいい。
何度そう思ったことか。
誰にも渡したくない、側にいたい、いて欲しい。
寿也の中でそんな独占欲が日増しに強くなっていく。
愛していると思えば思うほど、別れがつらくなっていく。
時の流れとは無常なもので、そんな寿也の気持ちを知る由も無く今日という一日が始まろうとしていた。
前/ススム
Menuへ戻る