海堂編

LoveSick


目を開けると、そこは自分のベッドの上だった。

まだ辺りは薄暗く、下では寿也がすーすーと寝息を立てて眠っていた。

昨夜のあれは夢だったのだろうか?

ボーっとする頭で考える。

ふと自分の腕を見ると、くっきりと赤く縛られた跡が残っていた。

オマケに腰からズーンと鈍い痛みが響いてくる。

夢じゃない……。

次第にハッキリとしてくる記憶。

昨夜の出来事がみるみるうちに甦る。

昨夜の寿也は確かに怒っていた。

怒らせたのは自分だ。

今まで何度も身体を重ねてきたが、あんなに激しくされたのは初めてだった。

原因はもちろん眉村との行為だ。

あの時、きちんと眉村を拒んでいれば、こんな風にならなった。

その気も無いのに、つい受け入れてしまった自分が情けない。

「……はぁ、なにやってんだよ。俺」

髪の毛をかきあげながら、窓の外を眺めると、まだ夜明け前だ。

カーテンの隙間から月が見えている。

「吾郎君?」

「わりぃ。起こしちまったか」

下を見ると、眠そうに目をこすりながら、ムクリと起き上がる寿の姿が見えた。

まだ、怒っているだろうか?

顔を見るのが怖くて、思わず布団を目深にかぶる。

梯子を上ってくる音がする。

「さっきは……ごめん」

思いがけない言葉に、慌てて顔を覗かせる。

そこには、俯いたままの寿也がいて、今にも泣きそうな顔をしていた。

「なんだよ、悪いのは俺だろ? 寿也が謝ること、何もねぇよ」

そう、悪いのは自分だ。

「でも、君にあんなひどい事して」

「いいんだよ、別に。だから、そんな顔やめろよ」

そんな葬式みたいな顔されたら、どうしたらいいかわからなくなる。

寿也の髪の毛にそっと触れてみる。

/ススム

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