海堂編

LoveSick


吾郎はいてもたってもいられず、部屋を出て行こうとベッドから立ち上がった。

「吾郎君」

低い声で呼び止められ、吾郎の肩がビクッと震える。

吾郎はまともに寿也の顔を見ることが出来ないでいた。

「僕に何か隠し事してない?」

「い、いや別に……何もねえよ」

声が裏返り、明らかに動揺している。

「ちゃんと僕の目を見て答えなよ」

そう言われ、恐る恐る覗き込む。

顔は笑顔だが、目は決して笑っていない。

「眉村と二人っきりで何してたの?」

「だ、だからそれはさっき説明しただろ……」

本当のことなんて、言えるはずが無い。

怪しい、絶対に怪しい。

二人の間に何かあったことは間違いなさそうだ。

どうしても、話すそぶりを見せないため、寿也は作戦を変えることにした。

「まぁ、吾郎君が話したくないって言うんなら、もういいよ」

にっこり笑ってそう言われ、その言葉に、ホッと安堵の表情を浮かべる。

それを、寿也は見逃さなかった。

「僕、ちょっとトイレに行って来る」

そういって、部屋を出た。

そして、トイレとは反対の方向へ。

目指すはもちろん眉村の部屋だ。

トントン

ノックするとすぐに同室の薬師寺が顔を出した。

とても珍しい客人に目を丸くする。

「眉村君、いるかな?」

「あ? ちょっと待ってろ」

すぐに眉村が出てくる。

「ちょっといいかな。話があるんだ」

大体の見当がついているのか素直に寿也の後をついていく。

二人は、人気のない寮の裏手にやってきた。

「話しって、なんだ」

「吾郎君から聞いたんだけど。君、彼とエッチしたんだって?」

眉村の眉毛がピクリと動く。

「茂野が、そう言ってるのか?」

「そう、どうも様子がおかしいから、さっき問いただしてみたんだ。そしたら……」

寿也の巧みな演技にすっかり騙され眉村は、

「すまん」

と頭を下げた。

「やっぱり、そうなんだ」

「……?」

ある程度の覚悟はしていたけれど、ショックは大きかった。

寿也の様子を見て、初めて自分がカマをかけられたことに気がつく。

が、時既に遅しだ。

「さ、佐藤、まさか」

「悪いね。吾郎君があまりにも強情だから、君の口から直接聞いたほうが早いと思って」

ぎゅっと握った拳が震えている。

この場で一発殴ってやろうかとも考えたが、騒ぎが大きくなるのは困るのでなんとかこらえる。

「じゃあ、僕、戻るから」

騙してゴメンね。と言い残し、くるりと踵を返して寮へと戻っていった。

「すまん、茂野」

眉村は吾郎のそう遠くない未来を想像し、ポツリと呟いた。


/ススム

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