話は少し前に戻る。
寿也が監督室へ行くと、足を組んで腕組をしている静香が待っていた。
その隣には、泰造も控えている。
「あの、お話しって何ですか?」
その雰囲気から、ただならぬものを感じる。
「早速で悪いんだけど、あなたにちょっと聞きたいことがあって」
「なんですか?」
「茂野君のことだけど」
寿也の肩がピクリと反応する。
「彼の、交友関係……特に女の子方面について教えて欲しいの」
「はぁ?」
窓の外に視線を移したままの彼女が質問した内容が全く予想だにしないものだったので、間の抜けた声を上げる。
「あなた茂野君と同室だし、仲がいいから知っているでしょ?」
そう言われて、寿也は首をかしげる。
そんなこと、直接彼に聞けばいい話だ。
なんで、自分が呼ばれたのかそこには何か他に理由があるような気がした。
「茂野君が女の子と親しくしているのは見たことありません」
「そう、じゃぁ彼は昨日練習が終わった後、何処で何をしていたのかあなた知ってる?」
一体何を調べたがっているのか真意はわからない。けれど、嘘をつく理由は何も無いので正直に答える。
「夕べは、夕食をとってその後もずっと僕と一緒に部屋にいました」
「それを、証明できる人はいるの?」
静香の質問はまるで尋問のように聞こえる。
「部屋で、消灯まで児玉や三宅がいましたが、何か問題でも?」
いささかムッとした口調で答えた。
「消灯のあと、彼はどこかに出かけたりしてない?」
「どうしてそんなこと、僕に聞くんですか? 直接本人に聞けばいいじゃないですか」
あまりに不躾な質問でさすがの寿也も頭にきていた。
「彼に聞いても正直に答えてくれないと思ってるから、あなたに聞いてるんじゃないの」
静香も負けじと声を大きくする。
一体どういうことだろう?
昨日の様子を聞いて僕から何を聞きだそうとしているのか?
これではまるで、吾郎くんを疑っているように聞こえる。
「茂野君がなにか問題でも?」
寿也の質問に二人は顔を見合わせる。
「実はね、彼に彼女がいるみたいで、夜中にこっそり会ってるんじゃないかって、疑ってるの」
「彼女!?」
二人の言葉に目を丸くする。
そんなはずは無い。
だって、夕べもその前もずっと彼が寝付くまで自分の腕の中にいたんだから。
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