海堂編

LoveSick


寿也が部屋を出て行ったあと、吾郎は部屋で寝転がりながら、児玉から借りた漫画を読んでいた。

 左手にはトレーニング用の鉄アレイを持っている。

 トントン

 ふいに、ドアをノックする音が聞こえてくる。

 三宅でも遊びに来たのだろうか?

 そう思って、ドアを開ける。

 とても珍しい客人に、吾郎は驚き目を見開いた。

 もう少しで手に持っていた鉄アレイを自分の足の上に落とすところだった。

 そこにいたのは、眉村だ。

 先ほどのトレーニングルームの件もあるので、出来れば会いたくなかった。

「珍しいじゃねぇか。お前がココに来るなんて。 寿也ならいないぜ」

「お前に用があって来たんだ」

「お、おう。まぁ、入れよ」

 ちょっと戸惑いながら、中へと案内する。

 自分の椅子に彼を座らせ、自分は寿也のベッドへ座る。

「で、用事って何だ?」

 ぶっきらぼうな物言いに、彼は黙って自分の首筋を指差した。

「ココ、落としておいたほうがいいぞ」

「な!?」

 いきなり何を言い出すのかと、驚いた。

 眉村は、落ち着いた口調でポツリポツリと話を進める。

 先ほど寿也が呼ばれたのは泰造の差し金だ、と言う。

 たぶん、吾郎の女性関係を疑って仲のよい寿也から、

 何か決定的証拠をつかもうとしているに違いない。

 だから、一番確実なその証拠を早く消したほうが身のためだ。

 そう彼は忠告にきたのだった。

「確かに、こんなの付けて歩いてちゃ問題にもなるよな」

 そう言って、立ち上がる。

 だが、ふと気がついた。

 徴の消し方を知らなかった。

「あのさ、眉村……お前消し方わかるか?」

 眉村は「そんなことも知らないのか」と呟いて吾郎の手を引っ張り風呂場まで連れて行く。

 風呂場のスイッチを入れ、ぴしゃりとドアを閉める。

「熱い蒸しタオルを押し当てて血行をよくすればそのうち消える……根気の要る作業だがな」

「おっ、そうかよ。 サンキュ、眉村」

 風呂場は時間外使用禁止のため、ばれてしまっては元も子もない。

 部屋を出て行こうとする、眉村を思わず呼び止めた。

「なんだ、まだ何かあるのか?」

「悪りいけど、誰も来ないか見張ってて欲しいんだ。後でなんかおごるから。な、頼むよ」

 手を合わせ拝まれて、眉村はしぶしぶ承知した。

/ススム

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