部屋に戻った二人は、早速お互いがどのような休日を過ごしていたのか話していた。
「吾郎君は、なにやってたの?」
「俺は、真吾の世話。あとは、いつもどおり走ったり、筋トレしたりだよ。いつもと変わんねーよ」
「真吾? 誰それ」
聞きなれない名前に、思わず問い返す。
「そういや、寿は知らなかったっけ? 俺の弟だよ」
「へぇ、弟がいたんだ」
「あぁ、春にはもう一人家族が増えるんだぜ」
「そうなんだ。楽しそうだね」
少し寂しそうな表情になった彼を見て吾郎は、寿也が家族に捨てられ祖父母に引き取られていたことを思い出した。
なんと声をかけていいのかわからず、思わず黙り込む。
それに気がつき、寿也は笑顔で言った。
「どうしたの? 僕は気にしてないよ。だって今の僕にはおじいちゃんやおばあちゃんがいるから」
それに、すぐ隣には君がいる。
それだけで、僕は幸せなんだよ。
だから、そんな顔しないでよ。僕は平気だから。
軽くおでこにキスをして、はにかみながら笑う。
「……親父がさ……」
「ん?」
「今度、俺の恋人家に連れて来いって」
「え?」
彼の言葉に、目を丸くする。
「もしかして、僕たちの関係話したの!?」
「言ってねーよ。言える訳、ねーじゃん」
がばっと起き上がると、彼の言葉にそうだね。と頷く。
「突然、付き合ってるやついるのかって聞かれてさ」
「それで?」
「いるって、答えたら一度連れて来いって」
ベッドの上に座りなおすと、困ったと言うような表情をする。
「でもさ、君が僕を連れて行ったら、きっとご家族はビックリするだろうね」
「だよな」
その時の様子を想像し、思わずぷっと吹き出した。
「きっと、僕たちがこんな事してるなんて、夢にも思ってないよ」
そう言って、優しくキスをする。
久しぶりの甘いキスは、触れるだけでドキドキした。
「……寿」
自分から腕を絡ませ口付ける。
「吾郎君……」
寿也もその想いに答えるかのように、優しく抱きしめあう。
「ぅあ……」
首筋に舌を這わせると、とたんに頬が紅潮する。
その姿は艶やかで、潤んだ瞳にクラクラした。
その日は何度も愛し合い、激しくお互いの存在を確かめ合った。
家族や友人誰にも言えない秘密の関係。
決して世間では受け入れられるはずもない不毛な道だとお互いわかっていた。
けれども、この想いは止めようもなかった。
彼が好きだ。寿也は心の底からそう思っていた。
離れたくない。海堂を辞めてどこかへ行ってしまう。
そんなのは嫌だ。
近づくタイムリミット、彼の不安は募るばかり。
どうか、この時が永遠に続きますように。そう思わずにはいられなかった。
前/ススム
Menuへ戻る