海堂編

LoveSick


翌日になっても部屋から出てこない吾郎を心配して、英毅が様子を見にやってきた。

桃子が気を利かせて、真吾と外へ出かけていく。

「何か、あったのか?」

「別に」

泣きはらした顔を見られたくなくて、布団に顔を埋めたまま答える。

「何もなくてお前が部屋にこもるわけないだろ? 母さんも心配してる」

話してみろよ。と言われ、首を振る。

英毅は深いため息を吐いた。

「さては、お前……ふられたな?」

しばらくの沈黙の後、英毅がポツリと呟く。

ぎくっとした。

実際にはふられたわけではないが、似たような状態であることは確かだ。

「図星か」

仕方ないやつだ。と、立ち上がったかと思うと吾郎の布団を力ずくで引っ剥がす。

「なんだ、女にふられて泣いてたのか」

ププッと、思わず笑いそうなのを堪える。

「んだよ……からかいに来たのかよ」

吾郎は明らかにふて腐れて、そっぽを向く。

「そうかそうか、お前もとうとうそんな年になったのか」

「ガキ扱いすんな。親父」

ポンポン頭を叩かれ、ムッとした表情を浮かべる。

「女にふられて、泣き寝入りするやつは充分ガキだよ。」


「だから、ふられてねーって!!」

「じゃぁ、なんだ? どうしたんだ?」

「別に、親父には関係ないだろ?」

再びプイッとそっぽを向かれ、なんとか聞き出してやろうと次の手を考える。

「お前が話したくないって言うんなら仕方ないな……。でも、いつまでもくよくよ悩むんじゃねぇ。母さんが心配するだろ?」

それは、わかってる。

わかってるけど、二人の顔が頭から離れない。

自分の中のもやもやした気持ちが吾郎を締め付ける。

「よし、こういうときは気晴らしが一番だ」

「!?」

そう言って、嫌がる吾郎を無理やり引っ張りだす。

「おい、何処連れてく気だよ!」

「いいから黙って乗れ」

無理やり押し込められて、車に乗って向かった先は近所のバッティングセンターだった。


/ススム

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