翌日は家中の大掃除を手伝ったり、真吾の相手をしたりしてあっという間に過ぎていってしまった。
年が明けて親戚まわりを済ませると、家族全員で初詣に行くことになった。
吾郎は家で待っていると断ったのだが、桃子が全員で行きたいと言い張ったので仕方なく車に乗り込む。
神社の前に着くと結構な参拝客が集まっており、中々前に進めない。
「オイ真吾、俺からはぐれるんじゃねーぞ」
「吾郎兄ちゃん、肩車して」
「たく、しかたねーな……。ん?」
甘えてくる弟を肩に乗せ、参堂を進んでいく途中、見慣れた後姿を発見した。
……寿也だ……!!
それが誰だかすぐに気が付いたが、隣に同い年くらいの女の子がいるのを発見し凍りつく。
彼女と仲よさそうに微笑んでいる姿はまるで、そこらじゅうにいるカップルと大差ない。
吾郎は、かなりのショックを受けていた。その場から動くことが出来ずに、呆然と立ち尽くす。
「どうかしたの? 吾郎?」
「あ、あぁ……なんでも、ねぇ」
桃子の声でハッと我に返り、もう一度寿也の姿を探したがもうどこにもいなかった。
家に着くとすぐさま吾郎は部屋へ篭ってしまった。
(大事な用って、デートのことだったのかよ!)
二人で微笑みあっている姿が頭に焼き付いて離れない。
女の子はどこかで見たことがあるような気がしたが、どうにも思い出せない。
俺とのことは、遊びだったのか?
そんな考えに至り、ツンと鼻の奥が痛くなった。
「吾郎? どうしたの?」
コンコンとノックする音が聞こえるが、とても部屋から出る気になれない。
「わりいな、母さん。しばらく一人になりたいんだ。」
「そう……。わかったわ」
階段を下りていく足音が聞こえる。
カーテンを閉め切り、薄暗い部屋の中ベットに体育座りをして頭をたれる。
知らない間に、涙が頬を伝っていた。
「ちくしょう」
胸が張り裂けそうなくらい苦しい。
涙が溢れて止まらなかった。
結局その日は部屋から一歩も出ず、食事も食欲がないからと取らなかった。
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