季節は移り変わり、いつの間にか世間は冬休みに入っていた。
でも、彼ら野球部にはあまり関係のないことで、お正月前までみっちりと毎日練習メニューが組み込まれている。
寿也は最近絶好調で月に一度の紅白試合で結果を残し、四番バッターの地位を不動のものにしていた。
事に、眉村の球は確実にバットへ当てて行く。
「すっげーよな、佐藤」
「あの眉村を、完璧に捉えてるからな」
もはや、バッティングで彼を超えられるものはいないほどだ。
チームメイトからも感嘆の声が聞こえてくる。
一方の吾郎は、今日は先発を外されベンチで大あくび。
あまつさえ、試合中にウトウト。
「眠そうだね? 吾郎君」
クスクスと笑い声が聞こえ、声の主を睨み付ける。
「当たり前だろ」
むすっとした表情に、寿也は首を傾げる。
「何か、怒ってる?」
「決まってるだろ? お前のせいで俺は寝不足だし、腰はいてぇし……最悪だぜ」
小声で話す彼に、あっと言う顔をする。
「たく、毎日毎日……。欲情しやがって」
「だって仕方ないだろ? 君だって感じてるくせに」
「っ!」
ふぅっと耳元で息を吹きかけられ、堪らず立ち上がる。
「どうしたんだ? 茂野、急に立ち上がって?」
「あ、いやぁ何でもねぇ」
慌てて、椅子に座りなおす。
肩を震わせ、笑いをこらえている相手をキッと睨み付ける。
チームメイトたちはそんな二人の様子に首をかしげるのであった。
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