海堂編
LoveSick
「ねぇ、いつまで走るのさ」
走り始めて三十分。海岸の端から端まで何往復もして、とうとう寿也は愚痴をこぼした。
「なんだよ、もう疲れたのか?」
情けねーなとバカにされ、さすがにムッとしたが文句を言いたいのをグッとこらえる。
「僕、飲み物買ってくる」
立ち上がって自販機へ向かい、冷たい飲み物を買う。
戻ってくると、まだ一人で走り続けている姿が見えた。
こうやって、時間を惜しんでトレーニングするのも一軍を倒すため。
そう考えると、胸の奥がズキンと痛む。
自分のことを好きだと言ってくれた。
あの言葉は嘘じゃないと思う。
だけど、彼はああしてトレーニングを続けている。
一軍を倒して海堂を辞めてしまうと、離れ離れになってしまう。
それでもいいと思っているのか?
本心が知りたかったがとても聞く勇気はなかった。
そもそも、なぜ海堂を辞めてしまうのか?
決して理由を教えてはくれない。
何度も聞いてみようと思ったが、それも怖くてできない。
胸が締め付けられる。
離れたくない。ずっと側にいて欲しい。
六月の壮行試合、もし負ければ彼はどうするのだろうか?
海堂から出て行くのを諦める?
色々な疑問が浮かび上がっては消えていく。
前/ススム
Menuへ戻る