海堂編
LoveSick
「お前のじいちゃんどうだった? 具合そんなに悪いのか?」
「特にそういうわけじゃないんだけど、もう年だから気弱になっちゃって……」
部屋に帰ってから二人は他愛のない話をしていた。
お互いが離れ離れになった間の状況報告と言ったところだ。
吾郎は、沈黙を恐れているかのように話し続ける。
「……吾郎君」
ふいに寿也の眼差しが真剣になる。
「逃げないって、約束したよね」
「あ、いやぁ……こういうことには心の準備ってもんが」
視線を合わせるのが怖くて、ついあさっての方角を向いてしまう。
逃げないと言った言葉を吾郎は少し後悔していた。
寿也が何を求めているかは解っている。
けれど、勇気が出なかった。
目を合わせれば、もう後戻りできなくなりそうで、怖いのだ。
しばしの沈黙。
「震えてるよ、怖いの?」
耳元で息を吹きかけられ、身体がビクッと跳ねる。
「耳元で、しゃべるなよ」
「大丈夫だから……嫌がるようなことはしない、約束する。」
優しくそっと髪をなでながら、愛しそうにそっと口付けをする。
「ん、寿……。」
自然に吾郎の腕が寿也の肩に回され、そのままベッドに沈み込んでいく。
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