「眠れないから、本を読んでた。そしたら足音がして、覗いてみたら茂野がいたから……」
「それは悪かったな」
申し訳なさそうにしている彼を見て、眉村がクスッと笑った気がした。
「そう言えば、前から聞いてみたかったんだが」
「なんだよ?」
「お前、佐藤とはもうヤッたんだろ?」
「!?」
あまりに不躾な質問に思わず、口に含んだコーラを吹き出す。
「なんだ、違うのか?」
「ヤッてねーよ!!」
顔を真っ赤にして、思わず大きな声を出してしまう。
「だって付き合ってるんだろ?」
「あぁ!?」
眉村の言っている意味が解らず素っ頓狂な声を上げる。
一体コイツはなにを言っているんだと、首を傾げた。
「一月ほど前、佐藤が妙に機嫌がいい日があったから、もうヤッたのかと思ってた」
「だから、ヤラねーって!!」
なにを考えているんだよ、と半ば呆れ顔の吾郎。
「でも、茂野も好きなんだろ?」
「!!」
再び飲んでいたものを喉に詰まらせ、ゴホゴホと咳き込む。
「何でそんなこと、教えなきゃいけないんだよ! 大体、俺達のことなんて関係ないだろ!?」
「関係、ある」
「!?」
今まで見たこともないような切ない表情の眉村に思わず息を呑む。
「お前が、好きなんだ」
「!!」
強引に腰を引き寄せられ、唇を塞がれる。
とっさに両手で突っぱね、服の袖で口を拭く。
「なにすんだよ。こういう冗談はキライだぜ」
怒りを露にする吾郎に、眉村はしずかに答えた。
「冗談なんかじゃない。俺は本気だ」
その表情は、いつのポーカーフェイスの彼とはまったく別の顔だった。
吾郎の身体からサーッと血の気がひいて行く。
「ちょ、ちょっと待て……オイッ」
目をギラつかせて迫ってくる眉村に圧倒され、思わず後ずさる。
「お前の気持ちはわかったから、……なぁ、落ち着けって」
さすがに身の危険を感じ逃げようとするが、逆に壁側へと追い込まれてしまった。
(ヤバイって、俺。助けてくれよ、寿!!)
ぎゅっと目を瞑り、心の中で叫ぶ。
その時だった。
――コーン!――
「ッ!?」
唇が触れ合う瞬間、何かが彼の頭に直撃した。
驚いて振り向くと、そこには空き缶を手にした、寿也が立っていた。
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