「じゃぁ、お先〜!」
「おう! またな」
先に着替えを済ませ、ロッカールームを出て行くロイの姿を見送り俺はそっと息を吐いた。
これでやっと着替えが出来る……。
誰も居なくなった部屋は閑散としていて何処か寂しい感じもする。
だけど、今の俺にはこの静けさが極楽のように思えた。
汗でベタベタするユニフォームを脱ぎ捨てると素肌に外気が当たり、今まで感じていた不快感をスーッと拭い去ってくれる。
やっぱ一人ってのはいいな。誰にも気を使わなくて済むし。
「まだ着替えていなかったのか」
「!?」
突然後ろから声を掛けられ、ビクリと肩が震えた。
振り向かなくても、声で誰だか直ぐにわかる。
「なんだよキーン、先に帰ったんじゃなかったのか?」
「お前が中々戻って来ないから、迎えに来た」
キーンの足音がゆっくりとこちらに近づいてくる。
そのたびに胸が高鳴り、妙な息苦しさと居心地の悪さを感じる。
「迎えに来た? へぇ、珍しい事もあるもんだな」
自分の動揺を悟られないよう、平静を装いながらシャツを羽織る。
意識するまいと思っていても、どうしてもキーンの視線を意識しちまう。
背中越しに感じる視線の熱さが、昨夜の情事を思い起こさせるようで体の奥が疼きだす。
そんな俺の思考をお見通しだとでも言うように、キーンの腕が腰にスルリと絡んだ。
「着替え一つで随分と手間取っているようだな」
なんなら、手伝ってやろうか? と、ベルトのバックルに手が伸びる。
「いいっ! 自分で出来るっつーの!」
慌ててそれを制した俺を見て、キーンはククッと喉を鳴らした。
「冗談だ。見ていてやるから早く着替えろ」
「……っ、なんで見る必要があんだよ」
見られると、なんとなく着替えにくい。キーンに見られると思うと尚更だ。
「別に構わないだろう? お前の着替えなど見飽きてる。いいから早く脱げ」
「〜〜〜〜っ、わかったよ!」
渋々とベルトに手を掛けバックルを外す。
静かな部屋にカチャカチャと金属音が響き、それが更なる羞恥心を掻き立てる。
と、その時。
モドル/ススム