吾郎受け R18

LoveSick


(今日も快勝だったな)

移動中のバスの中、吾郎は満足そうに窓の外を見ていた。

二週間ほど前、問題児のマードックが加入した事によりチームの雰囲気は悪化。試合にも勝てない泥沼な日々が続いていた。

一時は早くも終戦かとまで囁かれていたホーネッツだったが、徐々にチームワークを取り戻し足の怪我で戦線離脱していたキーンの復活によりチームは四連勝を飾った。

(やっぱウチにはコイツがいねーとな……)

チラリと視線を隣に移すと吾郎に凭れ穏やかな寝息を立てているキーンの姿が飛び込んでくる。

普段滅多に寝顔など見せる事がない彼が無防備な子供のような姿を自分の前に晒していると思うと、嬉しくて顔の筋肉が思わず緩んでしまう。

車内は連日連戦で疲れたチームメイト達の寝息が響き、吾郎はそっとキーンの手に自分の手を重ねてみた。

自分も身体は疲れている筈なのに、手から伝わる彼の温もりが愛しくて仕方がない。

キャッチャー特有のゴツゴツとした指先の形を確かめるように握りしめると不思議と胸が高鳴ってくる。

(俺、この手にいつも抱かれてんだよな……)

ふと、そんな事を考えカッと頬が熱くなった。

直ぐ側に他のチームメイトが居るのに何を考えているのかと慌てて手を離そうとする。

だが……。

「……何を百面相しているんだ?」

「っ!」

僅かに早く強い力で腕を引かれ耳に低く甘い声が響く。

「おまっ、起きてたのかよ」

「あぁ。さっきからな」

にやりと意地の悪い笑みを浮かべ面白そうに吾郎を見つめる。

起きていたと気付いていたのなら手なんか握らなかったのに。

吾郎は恥ずかしくて穴があったら入りたい気分だった。

「たくっ、気付いてたんなら早く言えっての」

恥ずかしさを隠すように頬杖を尽き窓の外に視線を移す。

そんな行動はお見通しだったのかキーンは僅かに座る位置をずらし吾郎に身を寄せて来た。


モドル/ススム



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