「吾郎君、一緒に練習しないか?」
ウォーミングアップをしていると寿也が声を掛けて来た。
「いいけど、お前バッティング練習するって言ってなかったか?」
「そう、なんだけどさ……、やっぱり君と一緒にやりたいなーなんて思って」
視線を僅かにそらし頬をかく。
「だめかな?」
なんて聞かれると、断れない。
まぁ、別に断る理由もねぇけどな。
「いいけど俺、眉村と約束してっから一緒になるけどいいだろ?」
「眉村?」
その単語に、一瞬だけ寿也の眉がピクリと吊り上がる。
コイツ、相変わらず眉村嫌いなのか……。
普段は普通に接してるし、高校でもバッテリー組んでたくらいだからもう大丈夫かと思ってたんだが……。
「なんだよ、嫌なのか?」
「別に。 僕は構わないよ」
嘘くさい笑顔を貼り付かせ、俺の腕を取る。
「おい、茂野」
丁度その時、目の前にグローブ持った眉村が現れてジッと俺と寿也を見つめていた。
「悪い、眉村。なんか寿也も一緒に練習したいんらしいんだけど、構わないだろ?」
「……あぁ」
こっちは眉ひとつ動かさず、静かに呟くとさっさと先に行ってしまった。
たくっ、相変わらず無愛想だな。
WBCが始まって少し柔らかくなったかと思ったんだが、どうやらそうでもないらしい。
何となく、いつもブルペンで練習してる時より機嫌が悪いような気がするのは気のせいか?
モドル/ススム