八月も終わりになった頃、海堂の二軍寮では食堂で野球部員たちだけの宴会が催されていた。
というのは、二軍監督の早乙女静香をはじめ、大人たち全員が急用で今夜はいないためだ。
五月蝿い大人たちがいないこのチャンスを生真面目に普段どおりの生活をするのはもったいないと、それぞれがおかしや飲み物を持ち寄って、ワイワイ盛り上がっていた。
「なぁ、王様ゲームやろうぜ!」
誰かがそう言い出しみんなもそれに賛同する。
始めはくすぐりっこしあったり、ほっぺにキスなど軽いのもだったがやはりお約束どおり発言はどんどんエスカレートしてゆく。
みんなも無礼講というだけあって、文句の一つも言わず楽しそうにしていた。
「おーい次の王様誰だぁ?」
「あ、僕だよ」
寿也が立ち上がった。
その拍子に、吾郎が持っている数字が見えてにやりと心の中で笑った。
「じゃぁ、三番の人王様とキスすること!」
「えっ! えええっ!!」
周りがおおっと盛り上がる中、指名された吾郎は素っ頓狂な声を上げた。
「ほら、吾郎君」
ふふふっと怪しい笑みを浮かべる寿也に、吾郎は引きつり笑いを浮かべる。
「な、なぁ・・マジでやんのか?」
「当たり前だろ? 王様の言うことは絶対なんだから♪」
にっこり笑われ、戸惑っていたが意を決して一瞬だけ唇に触れる。
その瞬間頭をがっしりと掴まれて、深く口付けられた。
「んっ!!」
どんどん頬が紅潮してゆく吾郎の様子を面白半分に見ていたメンバーは喉を鳴らし目を皿のようにして見つめた。
「は……ぁ」
息苦しくなり唇を離す。
「て、てめぇ! なにすんだよ!」
怒りを露にする吾郎に寿也は余裕の笑みを浮かべる。
「いいじゃないか、今日はハメをはずしたって」
「だ、だからって人前でこんなこと」
恥ずかしそうに頬を染める吾郎は、その辺についであったコップの飲み物を一気に飲み干した。
モドル/ススム