ある日吾郎は学校が終わったその足で、一人スポーツ用品店に足を運んでいた。
部から支給されたスパイクを履きつぶしてしまったため実費で購入するためだ。
「ちっくしょー、月末の財布が寂しい時に、痛い出費だぜ」
ちょうどよいスパイクを見つけレジを済ませて、一気に少なくなった財布を覗き、小さく息をつく。
店を出て、寮へと戻る途中に一軒の古ぼけた骨董品を扱う店を発見し、ふと足を止める。
店先には数々の壷や置物が並んでいて、その端に一個の古ぼけたランプが置いてあった。
別に、骨董品に興味があるわけではなかったが、なぜかそのランプが気になってしまいマジマジと見つめる。
黒くすすけたランプは、まるで吾郎に手に持って欲しいと訴えているようで、自然と手が伸びた。
「なんだ、これ」
手にもって見るととても軽く、なにやらどこの国のものかもわからない文字が刻まれている。
不思議に思っていると、店の中から見るからに怪しい男が現れて、吾郎に近づいてきた。
「いやー、この願いのかなう魔法のランプを手に取るとはお客さん、お目が高い!」
「魔法のランプだぁ!?」
「そうです、お客さんこれはかれこれ、1000年以上前に作られたもので、その手に持った者の願い事をかなえてくれると言う魔法のランプなんです。」
明らかに、売り込もうという気満々の男に、吾郎はかなり退いてしまう。
(うぜぇから、早く切り上げたほうがよさそうだな)
尚も、そのランプについて熱く語る男を冷ややかな目で見つめ、ランプを元の場所に戻そうとした。
しかし――。
モドル/ススム