「なぁ、ヤろうぜ?」
「何を血迷ってんだ!?……っ!」
慌てる彼にお構いなしに、吾郎は薬師寺の頬に触れて、自分から口付けをした。
「んっ!! んっ」
薬師寺は必死に逃れようとジタバタもがいていたが、投手の彼に腕力勝負で叶うはずもなく、逃げる舌を追い掛けられ、歯の裏をなぞられて、久しぶりの感覚に、ビクッと身体を強張らせた。
(ヤベッ、なんでこんなに茂野のやつ、キス巧いんだよ)
ふっと唇が離れ、薬師寺は、はぁっと熱く息を吐く。
「感じた?」
「だ、誰がっ!」
カァッと赤くなり、吾郎を見ると彼も頬を染めていた。
「なんだよ、勃たねぇの?」
「あ、アホなこと言ってんじゃねぇ!!」
「いいじゃん。遊びって事で」
「あ、遊びって……もうちっとマシな遊びにしろ」
呆れて口が塞がらない薬師寺に、吾郎は短く息を吐いた。
「薬師寺だってさぁ、眉村とヤれなくて辛くねぇ?」
「ロコツにヤるとか言うなって!」
「だって事実だろ? なぁ、シよ?」
「ヤりたいなら一人でやれ」
「無理だって。俺、一人じゃイケねぇもん」
平然と言い放ち、薬師寺の毛布を奪い取り、膝の上に跨る。
「……」
「なぁ、一人より、二人のほうが断然気持ちいいって、知ってんだろ?」
「そ、そりゃ……まぁ……」
「じゃぁ、決まりな」
すっかり吾郎のペースに乗せられて、薬師寺はぽりぽりと頭を掻いた。
「たく……茂野といると、調子狂うぜ」
はぁっとゆるく息を吐いて、妙にこの状況を楽しんでいる相手に視線を送る。
「で? どっちが攻める?」
「は?」
吾郎の問いに、薬師寺は素っ頓狂な声を上げた。
「だから、どっちが上になんだよ」
「どっちって……」
「俺さ、一度でいいから攻めてみたかったんだよな」
ウキウキした声色で服を脱ぎ始める吾郎に、薬師寺はうろたえた。
「ちょっと待て! 誘ったのはお前なんだから、責任取れよ」
「えーっ俺、ヤダ」
「ヤダって、なんて自分勝手な……」
呆れ声を上げる薬師寺に、吾郎はお構いなしでズボンの上から触れてくる。
「おいっ、どこ触ってんだ! てめぇ!」
「大丈夫だって。寿也で覚えてるから、自信あるぞ」
「何の自信だよ、なんのっ」
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