一度部屋に戻ってその後、自販機でジュースを3本購入。
わざわざ紙コップのジュースを選んだのは、ある細工をするため。
部屋に戻って取ってきた例の媚薬を吾郎と薬師寺に渡す予定のコップに数滴たらす。
この薬、以前二人にそれぞれ使用しているため、効果のほうは確認済みだ。
どうやって持っていこうかと迷っていると、ちょうど眉村を発見、声をかけた。
「あのさ、今から吾郎君の部屋に遊びに行くんだけど、眉村もどお? 薬師寺も同室だし」
薬師寺という単語に、彼の眉がピクリと反応する。
「わかった」
自販機で購入したジュースを取り出し、小さく答える眉村に寿也は心の中でほくそえんだ。
「悪いんだけど、このコップひとつ持ってよ」
わからなくならないように、媚薬入りのコップは自分が二つ持ち、何も入っていないほうを眉村に持たせる。
こうして、二人は吾郎たちの部屋へ足を運んだ。
「ジュース買ってきたんだ。一緒に飲もうよ」
部屋に入ると、コップをそれぞれに渡す。
薬師寺は、眉村がいることに一瞬驚いた表情を見せる。
「おいっ、佐藤、まさかアイツにさっきのことばらしたんじゃ?」
「まさか。そんなことはしてないよ」
部屋の隅に、寿也を引っ張っていき、ひそひそ声で会話する。
眉村は、そんな彼の様子に首をかしげた。
薬師寺は、寿也の言葉にほっと胸をなでおろし、ジュースに口をつけた。
そのほんの一瞬に寿也が黒い笑顔を見せていたことは気が付くことはなかった。
「あっ、菓子も食おうぜ! さっき売店で地域限定のやつ見っけたんだ」
「好きだよね、吾郎君、地域限定とかそういう限定品」
自分の鞄からお菓子を取り出す吾郎に、寿也はくすくす笑う。
和やかな雰囲気に部屋は包まれていた。
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