しかし、ココは公衆の面前。
しかも多くの若者達が集まる店の中だ。
今は客もまばらだが、誰が見ているかもわからない。
「だ・・・ダメだ・・・こういうことは・・寮に帰ってから・・・」
「寮だって人がいて二人っきりになれないじゃないか。」
「そ・・・そうだけど・・・」
「大丈夫だ。メニューで隠せば見えないから」
そう言って、二人の間にメニューを立てる。
確かにすっぽりと覆われてしまうが、余計に目立つような気がして気恥ずかしさが先にたつ。
「もぅ・・・どうしてお前は・・・少しは我慢しろよ」
「それは無理な注文だな」
キッパリと即答され、吾郎は飲んでいたコーラをふき出しそうになった。
「な、なんで!?」
「なんでって・・・・・茂野が好きだからに決まってるだろ?」
平然と、さも当たり前のようにそういわれ、吾郎は茹蛸のように真っ赤になった。
「・・・・・・・も、バカやろう・・恥ずかしい事言ってんじゃねぇよ」
「事実だ。仕方がないだろ?」
「・・・・っ! ああっもう・・・・バカッ」
淡々と冷めた口調で言う眉村。
そんな彼の言動に一喜一憂している自分が恥ずかしく思え、吾郎はメニューを立ててチュッと口付けた。
「ち、ちゃんと・・・してやったからなっ」
耳まで真っ赤に染めて、ポテトをパクつく吾郎に眉村は柔らかく笑みを零す。
「・・・・・・映画・・・またいこうな」
「・・・・・次はぜってぇ盛らねぇって約束すんなら行ってやる」
「それは、茂野次第だな。」
お互い視線が絡んでクスクス笑う。
たまには、こんなデートも悪くない。
そう、感じた吾郎だった。
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