「たまには、映画でもみないか?」
と誘われて、たいして断る理由もなく気軽にOKしたのが全ての間違いだったと吾郎は思う。
連れてこられたのは、ホラー映画で、物音がする度にこうして身体をびくつかせているのだ。
いつもの横柄な態度は消え失せ、肩を竦る情けない姿など出来れば知られたくなかった。
そんな、吾郎の気持ちなど知る由もない眉村は、隣りに座る愛しい恋人の肩をそっと引き寄せた。
「ま、眉村っ…こんな人前で」
「大丈夫だ。誰も見ていない」
戸惑う吾郎に視線を送れば、辺りを気にしながら身体をビクつかせている。
そんな吾郎を見て眉村はフッと笑みを零した。
「あんだよ…笑う事ねぇだろ?」
僅かに頬を膨らませ拗ねたように言う吾郎。
それすらも、可愛らしいと思ってしまうのはやはり惚れているからだろう。
「すまん…つい…可愛かったから…」
「可愛くねぇっての」
バッカじゃねぇの?
悪態をつきながらポテトを咥え塩のついた指をチュッチュッと舐める。
その仕草に、不謹慎だと思いつつ、目が離せなくなった。
そうこうしているうちに、映画も佳境に入り、吾郎はすでに画面を正視出来なくなって、しがみついている腕にも力が入る
「……………茂野」
「あんだよ?」
「…………怖くないようにしてやる」
「は?」
ボソッと呟かれ、意味がわからず目を白黒させていると、眉村は突然吾郎の股間を撫で始めた。
「な、何すんだ、眉村!?」
「シッ、声がでかい…静かにしろ。」
驚く吾郎の事などお構いなしに、平然とした顔で股間をいやらしく撫で回す。
自分がいる場所の付近には誰もいないとはいえ、見つかってしまうのではないかと、ハラハラしていた。
しかし、そんな吾郎の気持ちとは裏腹に、すでに快感を知ってしまっている身体は、眉村の与える刺激にたいして敏感に反応を示していた。
「やっ…やめろっ…眉村…ぁっ」
「こんな状態で止めてもいいのか?」
意地悪くそう囁かれ、動きを止められると、すでに熱を持ち始めた身体の内部が疼いた。
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