フェニックスへ行くまでの間、俺達は互いのことを自己紹介がてら話をした。
なんと、八木沼っち、俺と同じ野球のために渡米したヤツだったんだ。
しかも、相当野球が好きみてぇで、余計に親近感が沸いた。
昼飯まで半分分けてもらって、気が付いたらウトウトしてて、次に目が覚めたときには八木沼ッちが泊まるモーテルの前だった。
「俺が予約入れてた市内のモーテルだ。お前とは、ここでお別れだ」
そう言って俺を置いて立ち去ろうとする。
「ちょ、ちょっと待てよ!・・・そんな殺生な! 俺、身包みはがされたの知ってんだろ!? 20ドルで俺に今夜どうしろって言うんだよ!!」
焦る俺に八木沼っちのきつい一言。
「甘ったれるな! 誰もがメジャーにたった一人でしにものぐるいで挑戦しに来るんだ! ここじゃ誰も助けちゃくれないし、みんな自分のケツは自分で拭くしかないんだ!」
・・・・そう、だよな。
八木沼っちの言うとおりだ。
「・・・・その通りだ。すまねぇ、ここまで助かった」
あーぁ、今夜は初めての野宿かよ・・・。
ぶっちゃけかなり凹んで、モーテルから出ようとしたら、いきなり呼び止められた。
「茂野! 今晩だけなら泊めてやる。その代わり条件があるけどな」
「条件!?・・・・なんだよ、それ・・・?」
「今夜一晩、俺の相手をしろ。それがイヤなら、諦めるんだな」
平然とした顔でさらりと言われて、俺は最初それがアレをする事だってわからなかった。
しばらく考えること数秒。
言ってる意味は理解できた。
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