(吾郎SIDE)
午後7時。
絶対に行かないと言っていたにも関わらず、待ち合わせ場所には約束の10分前から薬師寺と眉村が待っていた。
「あれ? 来ないんじゃ無かったのか?」
「別に、俺が行くと行ったわけじゃない! コイツがどうしてもと言うから……」
腕組をしてさも迷惑そうに眉村を見る。
フフッ、ホント素直じゃねぇな。
カップル喫茶がどういう所か、なんてアイツなら薄々気付いてるはずなのに眉村が行きたいって言ったってだけでついていくお人よしじゃねぇくせに。
尚もブツブツと言い訳している薬師寺が可笑しくて堪らない。
「じゃ、行こうか」
俺たちの分まで外出届を提出してきた寿也と合流し、俺たちは噂のカップル喫茶へと向かった。
「ところで、カップル喫茶ってどんな所なんだ?」
いかがわしい通りを横切って目的地へ向かう途中、眉村が小声で話しかけてきた。
「あれ? 寿から詳しく聞いてねぇのか? まぁ、ぶっちゃけて言えばハプニングバーと同じなんだが、違うトコは他のカップルがヤってるトコ見ながら自分らも盛り上がっちゃおうぜって店だな」
そんで、お互いの合意があればパートナーの交換、なんて事も出来ちゃう裏の大人の社交場だ。
「乱交みたいでちょっと興奮しねぇ?」
そう言うと、眉村は鼻をヒクヒクっとひくつかせた。
「お前、よくそんな情報知ってるな」
感心したように眉村が呟く。
「俺じゃねぇっつーの! 言いだしっぺは寿也だ」
チラリと視線を向ければ、寿也は逃げないように薬師寺の腕をがっしりと握っていた。
その様子が、恋人が腕組んで歩いてるみたいに見えて、ほんの少し面白くない。
「とにかく、行ってみればわかるだろ」
なんとなくモヤっとした気分のまま俺は眉村の腕を掴み足早に目的の店に入った。
「予約していた佐藤ですが」
後から来た寿也が受付を済ませると、さっさと奥の部屋へと案内される。
薄暗い照明の中、案内された場所に着くと薬師寺は近くにあったでかいベッドにどかっと腰を降ろした。
「なんだ、ラブホとそんなにかわらねぇじゃねぇか」
「そうでもないよ。仕切りは薄いカーテン一枚だし、覗こうと思えばいくらでも覗けそうだね」
不機嫌そうな薬師寺に寿也がわざとらしくカーテンを捲って見せる。
「コレは大きな声出したら他の人にも聞かれちゃうね。吾郎君」
「なっ、俺はそんなにデカい声ださねぇっての!!……っ」
クスクス笑いながら腰に腕を回され、思わず息を呑む。
「君は見られてる方が興奮するんだろう? フフ、楽しみだな」
「んっ、……ぁっ」
クニクニと服の上から乳首を摘まれて思わず小さな声が洩れる。
その瞬間薬師寺と目が合って、ゾクゾクとした快感が襲ってきた。
寿也の僅かな動きでも、薬師寺達が目の前にいるってだけで変に意識が集中して感じてしまう。
「くっ、……っは……」
「ほら、もっと君の感じてる声聞かせてやりなよ」
ゴクリと息を呑む二人の姿に満足そうな笑みを零しズボンの中に手が滑り込んでくる。
閉じようとする股の間に足を割り込ませいやらしい手つきで後ろから俺の身体を弄る。
いつも以上に時間をかけて全身を愛撫され、そのもどかしい動きに自然と腰が揺れた。
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