「ヤる事に飽きたって言うより寿也とスるのが飽きたって感じ。マンネリってやつかな」
「マンネリって、お前……」
「んでさ、薬師寺はそんな事考えた事ねぇの?」
カシャンっと凭れていたフェンスが小さな音を立て揺れる。
そりゃ、考えた事が一度も無い、と言えば嘘になっちまう。
マンネリ化なんて付き合ってりゃどんな恋人にだって起こる事だ。
まして俺たちは、一日の殆どを同じ場所で過ごすから立場で言えば夫婦と大差ない。
毎日顔あわせて、毎日ヤる事やってたらそりゃ多少は……。
色々と考え込んでいると、茂野はそれを肯定と取ったのかにぃっといやらしい笑みを浮かべた。
「なんだよ、その笑い。気持ち悪りいぞ」
「へへっ、まぁまぁ。あのさ、お互いマンネリ化してきた事だし偶には趣旨換えして新しい事してみねぇ?」
「新しい事? 断る」
「げっ、即答かよ」
あからさまに不服そうな顔をする茂野。
「当然だ。俺は現状に満足してるんだ」
こいつの考える事に関わるとロクな目にあわないからな。
「ふぅん、満足……ねぇ。眉村はどうなんだろうな?」
「!」
それを言われると、言葉に詰まる。
アイツが俺との関係に飽きていないのか、と聞かれれば即答する自信は無い。
それを見透かしたように茂野がグイッと俺の肩を引き寄せる。
「実はさ、今度カップル喫茶ってのに行ってみようと思うんだけど、お前らも一緒にいかねぇ?」
「カップル喫茶?」
耳元で聞きなれない言葉を囁かれ首を傾げる。
どんな場所かはわからないが、今までの話の流れからそれがいかがわしい店だと言う事は容易に想像がつく。
「つーか、もうお前ら二人の分も予約しちまったんだよな〜」
「はぁ!? てめっ、何勝手な事してやがるっ!」
「まぁまぁ、なんか新しい発見があるかも知れねぇし、今夜7時に寮の前に集合だからな!」
「あっ! おいっ! 俺はまだ行くなんて一言も……っ」
本当に強引なヤツだ。
行くなんて言って無いのに勝手に決めてさっさと教室に戻っちまった。
俺は、そんなトコなんて絶対に行かねぇぞ!
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