「茂野。肩慣らしするか」
ビュンッとボールが飛んでくる。
「おっ、いいねぇ。やろうぜ眉村♪」
受け取ったボールを投げ返そうとするといきなりボールを奪われた。
「!? おい、寿! 何のつもりだよ」
「キャッチボールなら僕とやろう」
「はぁ!? 何言ってんだ。俺は今から眉村と……」
「吾郎君は、僕より眉村を選ぶんだ」
「!?」
いきなりの寿也の言葉。
突然何を言い出すんだか。
「選ぶってお前、たかがキャッチボールじゃねぇか」
「ふっ、ガキだな」
向こう側で嘲笑めいた声が聞こえる。
「……なんだよ、寿。お前もしかして眉村がまだ俺の事好きだとか思ってるなんて考えてるわけじゃねぇよな?」
「考えてるよ。 ってゆーか、眉村だって、まだ君の事好きに決まってるじゃないか」
「え!? そーなのか!?」
驚いて眉村を見る。
アイツは何も言わないが心なしか口元が笑っていた。
眉村に告白されたのはもう3年位前。
俺がまだ2軍寮にいた時だった。
あの時はっきり、俺は寿也が好きだって言ったハズ。
「全く、君がそんなニブチンだから僕は心配なんだよ。見張ってないと眉村に食べられちゃいそうでさ」
そう言って肩を竦める。
「食うわけねぇだろ? 眉村はお前みたいな野獣じゃねぇっての」
チラリと視線を向けると、眉村はクッと喉の奥で笑った。
「茂野。お前本当に学習能力ってものがないんだな。俺がお前を襲う気がないっていつ言ったんだ」
「へ!?」
一瞬の出来事だった。
突然腰を思いっきり引き寄せられて唇を塞がれた。
「あーーーーっ!!!!」
寿也の悲鳴にも近い叫び声でハッと我に返る。
「なっ、なっ、ま眉村お前っ」
「俺だって、お前とこう言う事したいって思ってるって事だ」
「こー言うことしたいって……お前なぁ」
いきなり過ぎてびっくりするじゃねぇか。
寿也に至ってはあまりの衝撃に固まってしまっていた。
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