「なぁ寿! お前何怒ってるんだよ」
「別に。怒ってなんか無い」
スタスタと足早に廊下を歩いてゆく。
その後を追うように吾郎君がついてくる。
「嘘吐け! 怒ってんじゃねぇか。さっきから口をへの字に曲げて」
納得がいかないと言った表情で僕の肩口を掴む。
ピタリと足を止めれば、吾郎君も止まった。
「しつこいな。なんでもないって言ってるじゃないか」
苛々をぶつけても仕方の無い事だとはわかってるけど、どうしても言ってしまった。
「その態度が怒ってるって言ってんだろ? 俺、何かやったのか?」
その言葉でさっきの情景が頭に蘇る。
吾郎君は悪くない。
ただ、薬師寺達と談笑してただけだ。
それなのに、僕以外のヤツと話してるってだけでどす黒い嫌な感情が僕の心を蝕んでゆく。
「なぁ、寿。何とか言えよ」
吾郎君が納得いかないのも当然だ。
でも、それを伝える術が見つからなくて、僕は力任せに吾郎君を部屋に引き入れると壁に押し付けた。
「うわっとと……あっぶね。なんだよ、一体どうし……っ」
全部言い終わる前に顎を持ち上げ強引に口付ける。
「ん!? ん……んぅ……」
一瞬何事が起こったのかと目を見開き硬直していた吾郎君の身体から次第に力が抜けてゆく。
立ったままベルトのバックルに手を掛け、一気にズボンをずり下げると、吾郎君はギョッとして咄嗟に抵抗を始めた。
「ちょっ! なんだよ一体!? どうしたんだよ寿」
慌てて拒もうとするその態度が勘に障る。
「五月蝿いな。君は黙ってヤられれてばいいんだよ」
「!?」
こんな事言うつもりじゃない。
優しくしたいのにそれが出来ない。
「ふっざけんなっ! なんでいきなり……ぅっ」
威勢良く文句を言っていた吾郎君の表情がペニスを掴んだ事によって一瞬苦痛に歪む。
強弱をつけながら扱いてやると吊上がっていた眉が下がり次第に頬が紅潮してゆく。
「と、寿ちょっとタンマ」
扱きながら乱れたシャツを捲くり胸の飾りを舌で擽る。
もう抵抗する気は起きないらしく、ズルズルとその場に腰を降ろして熱い息を吐いた。
その間も扱く手は止めず徐々に熱く硬くなってゆくソレをピンポイントで攻めながら胸を甘噛みすると小さな嬌声が洩れて腰がうねった。
その姿に異常な興奮を覚え下半身が焼け付くように熱くなる。
「なんだ、強引にされてるのに感じるんだ。 実はこう言うのが好きなんじゃない?」
「ちがっ! そんなんじゃねぇっ」
ねっとりと先走りで濡れた指先を目の前に突き出し舐めると、顔から見る見るうちに羞恥に染まる。
「一体どうしたんだよ。今日の寿也、らしくねぇ」
「っ!」
らしくない。
その言葉が胸に突き刺さる。
らしくないって、何?
僕らしいって、どんなの?
色々な事が頭に浮かぶけどソレが全部うまく言葉に出来ない。
苦しくて、もう心の中がグチャグチャで、もどかしい。
その苛々をぶつける術が見当たらなくて、僕は強引に吾郎君の腰を引いて足を抱え込んだ。
「えっ、うわっちょっ! いきなりは無理だって……うっ!」
戸惑って再び暴れだした吾郎君の腰を押さえつけ先走りを塗りたくった僕自身を半ば強引に押し込んだ。
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