だって、好きでもないヤツの所に行くんだよ?
「じゃぁ、どうすりゃいいんだ?」
「とりあえず、携帯チェックしか無いっしょ?」
家に押しかけるのは最終手段。
先輩もそれで納得して、僕らは部室へ向かった。
部活中、先輩が見張りに立って僕はかばんを捜索中。
本当はしちゃいけない事なんだけど、プライバシーがどうとか、そんな事言ってられない。
数分後、制服のポケットの中から目当てのものを発見!
キー操作がロックしてある可能性もあるから、ドキドキしながらディスプレイを開いた。
幸い、ロックはしてなくって、あまりの無防備さにひょっとしてこの携帯には証拠が無いんじゃないかって、不安がよぎる。
写メールの画像フォルダを開いてみたら・・・・・。
ビンゴだった。
それはそれは、よく撮ったねと褒めてやりたいくらいの画像の数。
藤井先輩には悪いけど、このフォルダの画像、全て消去させてもらうよ。
あ、ついでに先輩の携帯とか、先輩に関するもの全て消去しちゃおっ。
・・・・よし。
これで、僕達は脅される理由は無くなった。
あとは、どうやって藤井先輩を懲らしめてやるかなんだけど・・・・。
「おいっ、大河!早くしろよッ!誰か来たらまずいんだから。」
不安そうな先輩の声で我に返った僕は、携帯を元の位置に戻し、ロッカーを閉めて何事も無かったかのように、部室を出た。
入り口で、先輩に作戦完了の合図を送ると、すごくほっとした顔をした。
屋上グラウンドまで戻る途中、先輩は珍しく僕の手を握ってきた。
大丈夫。
証拠はもう無くなっちゃったから、何にも心配することは無いんだ。
僕は自分にそう言い聞かせて、先輩の手をぎゅっと握り返した。
それから、さらに数日先輩は明るさを取り戻した。
藤井先輩は、まだ自分の携帯が弄られたって事に気づいていないっぽい。
ぷぷっ・・・。
情報管理がなってないマヌケ面におもわず、笑いが堪えきれない。
その日の部活終了後、山田監督が突然強化合宿の話しを持ち出した。
今度の連休中にみんなで泊りがけで合宿するらしい。
これは藤井先輩に復讐する大きなチャンスになりそうだ。
とっさに僕はそう思った。
合宿一日目、僕は前もって山田監督に部屋割りのことであるお願いをしていた。
その部屋割りを見て先輩は愕然としてたけど、希望通り藤井先輩と僕と吾郎先輩の3人が相部屋だ。
ふふっ・・・先輩から聞いた話じゃ、藤井先輩ってめちゃくちゃ下手くそだったらしい。
痛いし、早いし、無理やりだし、全然気持ちよくなかったって、この間先輩が散々ぼやいてた。
だから、見せ付けてやるんだ。
自信喪失するくらいにワザとね・・・。
そんな計画を先輩にばらしたら、「絶対ヤだ!!」って怒るのがわかってるから、直前まで黙ってることにしてる。
あからさまに嫌そうな先輩と、嬉しそうに鼻の下が伸びきった藤井先輩・・・。
対照的な二人と一緒に僕は部屋へと向かった。
部屋が近づくにつれ、先輩の足取りは遅くなり、僕の制服の裾をぎゅっと掴んでいた。
「・・・・・・大丈夫だから。」
そう言っても、まだ落ち着かないみたい。
そりゃ、嫌だよ・・・・。
一緒の部屋なんかなりたくないよね。
ごめんね先輩。
何度も何度も、僕は先輩を落ち着かせるように、先輩の手をぎゅっと握り締めた。
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