「先輩の様子がおかしかったから、悪いけど、後つけてたんっすよ。」
「・・・・っ。」
「僕のこと、嫌いになったんなら、ハッキリ行ってください。 二股なんて先輩らしく・・・・」
「違うんだ!・・・俺は別に藤井が好きでホテルに行ったわけじゃ・・・・。」
僕の言葉をさえぎって先輩が口を挟んだ。
好きでもないのに、ホテルに行くってどういうことだよ??
僕は、ますますわけがわからなくって、先輩をにらみつけた。
「俺・・・藤井に・・大河とのこと学校にバラされたくなかったら・・・ヤらせろって言われてて・・・それで・・・」
今にもなきそうな表情で先輩はそういった。
「脅されてたんですか?」
先輩は黙って頷く。
ちっくしょう・・・、僕、先輩が苦しんでるの全然気が付いてあげれなかった。
そっけなかったのは、僕のこと飽きたわけじゃなくて、脅されたからか・・・。
藤井先輩のヤツ・・・・、今度会ったらただじゃ済まさない!!
「大河・・・悪い。俺・・・・」
「先輩は、何も悪くない。悪いのは全部藤井先輩っす。」
僕が抱きしめると、一回り大きいはずの先輩が小さく感じた。
肩を僅かに震わせて、声を押し殺して小さな嗚咽が聞こえる。
「ごめん、先輩。・・・僕がもっと早くに気づいてればよかった。」
「大河・・・・、キスして・・・俺の中から藤井を忘れさせてくれよ。」
頬に伝う涙が先輩の苦しさを物語っているようで、指でそっとそれを拭い唇の輪郭をなぞるように口付けた。
嫉妬で気が狂いそうになるのを必死に抑えて、先輩を安心させるように、できるだけ柔らかくキスをする。
「っふ・・」
唇という器官が繋がっているというだけで、頭の中が沸騰しそうなほど熱くなる。
先輩の服の隙間に手を入れると、身体がビクッと強張った。
やっぱり、止めたほうがいいかも。
いつもなら、強引にヤっちゃうとこなんだけど、今日はなぜか冷静だった。
今、事に及ぶとたぶん先輩をめちゃくちゃにしてしまう。
それじゃぁ、たぶん藤井先輩と変わらない。
優しくしてあげたいけど、今の僕にそんな余裕はない。
首筋に這わせていた唇を離し、身体を離すと先輩は驚いた顔をした。
「どう・・・して・・・」
「今は・・・先輩のこと嫉妬でひどくしちゃいそうだから。」
まっすぐに僕を見つめてくる。先輩の顔を、僕は見れないでいた。
「いい。・・・ひどくしてもいいから。」
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