「……っ」
「ハハッ、まだ怒ってるの?」
「当たり前だろっ寿君のバカッ! 嫌だって言ったのによぉ」
むすっとした表情のまま睨み付けてくる吾郎に、寿也は思わず苦笑する。
「だって、あまりにも気持ちよさそうな声だすから」
「なっ、何言ってんだよ! そんな声出してないって!」
「ふふっ、可愛かったけどな」
真っ赤になって抗議の声を上げるその姿でさえも愛らしく思え、先ほどの痴態を思い出しつい表情が緩んでしまう。
「もー俺、帰る!」
「えっ!? あ、待ってよ、吾郎君!」
からかわれたのが悔しくて立ち上がった彼の腕を慌てて掴んで引き止める。
「なんだよ、離せよ!」
「ゴメン! もう、しないから」
しゅんとして俯いてしまった寿也を見て、吾郎はふぅっと緩く息を吐いた。
「約束だかんな? 絶対だぞ! 今度やったら、絶交だぞ」
「うん。もうしない。約束するから……君を好きでいることくらい、許してくれる?」
「っ!?」
チュッと頬にキスをされて、見る見るうちに頬がばら色に染まる。
「じゃぁ、またね吾郎君」
「あぁ、またな!」
ほんの少し気恥ずかしさに襲われながら佐藤家の門を潜り、自分の家へと続く道を歩いてゆく。
「”好き”かぁ」
今までの得体の知れない感情がジグソーパズルのように一つの答えとなって現れ、なんだか不思議な気分だった。
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