――そう、あの日もそうだった。
僕は吾郎君が完璧に寝付いた頃に部屋に戻った。
布団にはばっさりと山ができてたから寝てるもんだと思ってすっかり油断してた。
僕が自分の布団に入ろうと思って、めくったら。
吾郎君がいた。
??????
なんで、どうして……どうして吾郎君が僕の布団に!?
僕はかなり動揺していた。
そのうちに僕の視線に気がついて吾郎君が目を開けた。
心臓が口から飛び出そうになるくらい驚いた。
目が合うと吾郎君は開口一番こう言った。
「なんで俺を避けるんだよ。なんか悪いことしたか?」
違う。吾郎君は何も悪くない。
「別に避けてなんかいない。気のせいじゃない?」
「嘘つけ! 俺が寝てると思って、思いっきりホッとした顔してたくせに!」
怒りを露にする吾郎君。
そりゃ気付くよ。毎日一緒にいて目も合わせないんだから。
「俺のこと嫌いになったのかよ」
ふっと寂しそうな顔をする。
「吾郎君のこと嫌いになったわけじゃない」
「じゃぁ、どうして一緒に話もしねぇんだ!」
なんでって、決まってるじゃないか。
君を壊してしまいそうだから。
君の全てを奪って僕だけのものに。
愛してしまったから。
そんなこと言えない。言ったらきっともう幼馴染じゃいられない。
君の笑顔を見る事だってできなくなる。
そんなの僕には耐えられないよ。
なんていったらいいのか困っていたら、吾郎君はいきなり抱きついてきた。
そう、あの時のように。
僕の胸に顔を埋めて。涙こそ見せなかったけど切なそうにして肩が震えていた。
「俺……こんなに寿のこと好きなのに……。どうして俺を見てくれないんだよ!?」
僕は我が耳を疑った。
好き?
吾郎君が、僕のこと?
にわかに信じがたくて戸惑いがちに抱きしめると、驚いて顔を上げた。
視線が絡まる。
僕は目が離せなくって心臓が壊れそうなほどバクバク言って、息をすることも出来ない程緊張していた。
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