「はぁ」
自分の部屋へ戻りみんなの目を盗んで風呂場へ行き付着したものを洗い流した後、吾郎はグラウンドを眺めながら大きくため息をついた。
「どうしたんだ、茂野?」
ちょうどそこに薬師寺が通りかかり不思議そうに顔を覗きこむ。
「なんでもねぇ」
「どうせ佐藤となにかあったんだろ?」
彼は吾郎と同じように窓枠にもたれかかり、横目でチラリと吾郎を見た。
薬師寺とは、お互い同じ立場として何度か相談しあったりしていた。
「無理やり犯されたとか?」
「違う。寿也はそんなことしねぇ」
「じゃぁなんだよ」
吾郎は周りに人がいないか確認し、薬師寺に耳打ちした。
「実はさ、最近寿也のイクのがすっげぇ遅くってさ」
「……」
「別にインポって訳じゃなさそうなんだけど……ちゃんと勃つし……なんでかなぁ?」
ふぅっとため息をつく吾郎に、薬師寺は顔を真っ赤に染めていた。
「お前、そう言う悩みはもう少しオブラートに表現しろよ。聞いてるこっちが恥ずかしい」
「他にどんな言い方があるんだよ? まぁいいや、眉村はんな事ねぇの?」
「あるわけないだろ!?」
大声を出して慌てて口を噤む。
幸い辺りには誰もおらず、薬師寺は彼に小声で尋ねた。
「てゆうかお前ら、週にどんくらいヤッてんだよ? 回数多いと薄くなって遅くなるって聞いた事あるぞ」
「週にって言うより毎日三,四回くらい」
「ヤリすぎだ!!」
驚くべき彼の言動に、薬師寺は再び大声を上げた。
「お前……いくら好き合ってるからってそれはキツイだろ!?」
「んなこと言われても、二人でいるとどうしてもそういう雰囲気になっちまって……」
「脳みそ沸いてんじゃないのかお前……。まぁとにかく一週間くらいガマンしたら元通りになるんじゃないか?」
呆れ顔の薬師寺に吾郎は三度ため息を吐いた。
「一週間か。そんなにアイツ我慢できっかな……」
「んな事、俺が知るかよ」
そう呟いたとき、視界に恋人の眉村の姿を発見し、
「ま、ガンバレよ」と言って、薬師寺は彼の元へ。
仕方がないので吾郎も部屋に戻ることにした。
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