「あーぁ、いっそ事故にでもあったと思って忘れちまおうか」
俺ばっかり意識して何となく悔しい。
シャワーのコックを捻り頭から熱いお湯を被る。
鏡に映る自分の全身に赤く充血した痕を発見し、ギョッとした。
「あいつ〜、こんなトコにまで……」
これじゃぁ、着替える時誤魔化せねぇじゃねぇかっ!
太股の付け根の徴に触れると、急に昨晩の情景が蘇って身体が一気に火照りだす。
肌に触れる熱い唇の感触や身体を滑る長い指先。
思い出すだけでゾクゾクする。
「――って、ナニ考えてんだよ、俺は」
忘れようって、さっき決めたばっかじゃねぇかっ。
思いっきり頭をブンブンと振って雑念を振り払おうとしてると、不意に肩を叩かれた。
「……何さっきから一人で百面相やってんだ」
「ジュニアっ!?」
ソコには呆れた表情を俺に向け肩を竦めるジュニアの姿。
「なんで入ってきてんだよ、俺まだ途中なんだぞ」
「ゴチャゴチャ五月蝿せぇな。 お前が遅ぇから風呂場で転んでるんじゃねぇかと思って見に来てやったんだろうが」
「なっ、誰がそんな間抜けな事するかっつーの! 大体、それなら裸になる必要ねぇじゃねぇかっ」
「ホント、口の減らねぇヤツだな。俺がいつ服を脱ごうが俺の勝手だ」
ついムキになる俺の言葉に、ジュニアは面倒臭そうに頭を掻いて溜息を吐く。
くそ、溜息吐きたいのはこっちだっつーの。
なんでこいつはこんなに偉そうなんだよ。
ムカムカしてるとシャワーのコックを握っていた俺の手にジュニアの手が重なった。
キュッキュッと少しずつ水量が減って行くシャワー。
それと同時に浴室内の音も静かになってゆく。
「どうせお前、まだ身体も洗ってねぇんだろ?」
俺が洗ってやるよ。
そう呟いたかと思うと、ボディソープがたっぷりついた手の平が俺の胸を弄り始めた。
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