「たっだいまー♪」
「!?」
部屋の空気にそぐわない呑気な声。
その声で、此処が佐藤の部屋でだった事を思い出した。
「さ、佐藤……」
「……」
この状況は絶対にヤバいだろ!?
そう思い、佐藤の顔を覗き見る。
「やぁ吾郎くん、お帰り。眉村とのデート楽しかったかい?」
「!?」
怒っているかと思われた佐藤はにっこりと笑って、まるでこの状況がなんでもないような表情で茂野に話しかける。
「だから、デートじゃねぇって言ってるだろ?」
チラリと茂野と視線が合ったが、茂野も何事も無かったような顔で見事に俺の存在をスルー。
一体どうなってるんだ?
わけもわからず、どうしたらいいものかと悩んでいると茂野がニヤリと笑った。
「おい、眉村。中入って見ろよ。いいモン見れるぜ」
「なっ!?」
”眉村”という恐ろしい単語に、俺の身体は凍りつく。
こんな場面を見られたら、絶対にアイツは怒るハズ。
「……随分とお楽しみのようだな」
表情一つ変えずに一瞥する眉村。
「あ、違うんだコレは……」
「今更言い訳したって無駄だよ、薬師寺」
慌てる俺を面白そうに見つめ、腰を掴んでズンズンと突き上げてくる。
「や……ぁっ馬鹿! 佐藤やめっ……ぁあっ」
「ほら、聞かせてやりなよ。感じてる声」
「〜〜んっ……」
この、性悪!
睨みつけるとまた冷やかな視線が返ってくる。
「その反抗的な目気に入らないな」
いつもの穏やかな佐藤は何所へ行ったのか。
恐ろしいほど冷徹な表情で、眉村や茂野がいるにも関わらずベッドが軋むほど大きく腰をグラインドさせる。
「ん! ぁあっ!」
「……っ」
二人が息を呑む音が聞こえてくる。
こんな姿見せたくないのに一度敏感になった身体は貪欲に快楽を求め自然と声が洩れてしまう。
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