その後みんなと別れて僕は吾郎君の家へ。
家庭教師に来たときとあまり変わっていなくて懐かしささえ覚える。
「寿・・・・俺さ・・・お前に謝らなきゃいけないことがあるんだ。」
そう、吾郎君が切り出したのは僕が清水さんの話題を持ち出したときだった。
ほんの少し嫌味と皮肉を込めて、二人の関係を聞き出してやろうと思ったのに・・・
いつになく真剣な表情で僕と向かい合い真っ直ぐに僕を見つめてくる。
一体何を誤ることがあるんだろう?
首をかしげていると突然吾郎君が頭を下げた。
「ご、吾郎君!?」
「悪い、寿也!何ヶ月か前にお前に電話したことあっただろ?清水と付き合うことになったって・・・・・あれ、全部嘘だ。」
「・・・・・・・・・は?」
僕は最初、彼の言っている意味がわからなかった。
だって・・・嘘って・・・・
ありえないだろ!?
「一体・・・・どういうことだい?」
震える声で尋ねてみれば、吾郎君は顔を上げて僕を見る。
話を聞けば、僕がドラフト指名前だと知って、僕らの関係が世間にばれた時の事を不安に思っての強行だったらしい。
僕のことを嫌ったわけでも、清水さんのことを好きになったわけでもなくて、張り詰めていた僕の気持ちが一気に緩んだ。
前/ススム