「あっ……寿ィ!」
自分の声に驚いて目が覚めた。
さっきまでいたはずの寿也はいなくって、ココは自分の部屋。
全身汗びっしょりで気持ちわりぃ。
つか、夢かよ……。
次第にはっきりしてくる意識の中で、恐る恐る自分の下着に手を伸ばす。
うえ……。最悪だ。
はぁ、何やってんだよ俺。
この歳になって……シャレになんねぇっての。
幸いあたりはまだ薄暗くって、母さんも親父も眠っている時間だ。
今なら誰にもばれないかも知れねぇ。
そうだよ! 凹んでる場合じゃねぇっての!
こんな恥ずかしい証拠はさっさと隠滅しねぇと……そう思って立ち上がったのとほぼ同時、突然携帯がなりだした。
やっべ!
母さんたち起きてきちまう。
慌てて携帯を手に持って相手を確認しないまま受話器を耳に押し当てた。
「誰だよ一体、こんな朝っぱらから!」
「あ、おはよう。吾郎君……よかった起きてたんだね」
すげぇ聞きなれたその声。
思わず心臓が飛び出しそうになった。
「と、寿!? つか……なんで」
「昨日遠征から戻ってきたんだけど、急に君の顔が見たくなって」
受話器から聴こえてくるのはまさしく寿也の声で、俺の身体がズクンと疼いちまった。
やっべ、さっきの夢思い出ししまった。
寿也の声を聞いてるうちにだんだん変な気持ちになっちまって、火照った身体に自然に手が伸びた。
「あっ……」
「吾郎君? どうかした?」
「な、なんでもっ……ねぇ」
頭じゃダメだってわかってるけど、体がどうしても言うことをきかねぇ。
だんだん止まらなくなって、扱くスピードを上げる。
「っは……ぁっ」
「……っ」
堪らず洩れた甘い声に電話越しに寿也が息を呑んだのがわかった。
「吾郎君、ナニしてるの?」
「ナ、ナニも……っしてねぇ……んぁあっ」
低い、声がする。多分寿也は気づいちまってる。
そう思うと、余計に羞恥心が増して、身体が熱くなった。
あ、やべっ……もう、我慢できねぇかも。
寿也に聞かれてるってわかってんのに俺の身体はどうしても手だけの刺激じゃ満足できなくって、ヒクついてる場所に自分で指を突っ込んでみた。
「ひ……ぁっ」
だけど、やっぱ全然刺激がたりねぇ。
快感で麻痺しちまってっる俺の頭は、もう、ソノ事しか考えて無くって、何でもいいから代わりになるものを自然と目で探していた。
寿也はさっきから一言もしゃべらなくなっちまった。ただ、通話状態になってるから、聞いてはいるんだろうな。
時々、なんか、車輪の回る音と、ガタゴト音が聞こえてくるけど、今の俺にそれが何を意味してるのかなんて考える余裕はねぇ。
偶然その辺にマーカーを見つけ、震える手でそれを自分の孔に突き刺した。
「あ……! う……っ」
ベッドに凭れかかって、グチュグチュかき回すと、言いようの無い快感が押し寄せてくる。
「あっ、ああっ……はぁ、はぁっ」
開けっ放しの窓から、外に声が洩れちまうかも知れねぇ。
そう思った矢先。俺の部屋から見える庭のでけぇ植木が、ガサガサっと大きく音を立て始めた。
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