その日の夜、いつものように押し倒されて散々イカされた吾郎は中々寝付けなでいた。
自分のベッドで横になり、深いため息をつく。
「全く、寿也の野郎・・・俺の身にもなってみろっての。いっぺんくらい入れ替わってみりゃわかるんじゃねぇか?」
そうだ、立場が入れ替われば、少しは何かが変わるかもしれない。
吾郎はふとそう思った。
(まぁ、無理な話か・・・)
ふぅっとため息をついて、色々考え込んでいるうちにいつの間にか眠ってしまっていた。
ジリリリリリっ
いつものように、目覚ましの音がして、下で寿也がゴソゴソと布団から抜け出し、目覚まし時計を消した。
うーんと身体を伸ばした後、眠い目をこすりながら、部屋を出て洗面台へ向かう。
そこに寺門を発見し声をかける。
「おはよう。寺門君いつも早いね」
呼ばれた相手は、一瞬驚いた顔をしてじっと彼を見つめる。
「珍しいな。茂野がこんな時間にここにいるなんて・・・佐藤はどうしたんだ?」
「ヤダなぁ・・寺門君。何言ってるのさ、吾郎君ならまだ寝てるよ」
「・・・・お前寝ぼけてるのか?」
首をかしげて、眉を寄せジッと寿也をみる寺門にさすがに何かおかしいと気がついた彼は鏡を覗き込み絶句する。
「どうして・・・吾郎君!?」
髪の毛に触れてみたり、頬をつねってみたり、鏡の中の吾郎は自分と同じ動きをする。
「????」
「おい、大丈夫か、茂野? どこか頭でも打ったのか?」
訝しげな表情の寺門の声かけでハッと我に返った。
そして、大慌てで自分の部屋へと戻り、上で眠っている彼をたたき起こす。
「大変だよ! 吾郎君・・僕、吾郎君になっちゃった!!」
「あんだよ、寿ぃ・・・わかんねぇ事言ってんだ・・・?」
布団を目深にかぶり、迷惑そうに呟く彼を布団から引き剥がして、寿也は絶句した。
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