「おい、眉村その背中一体どうしたんだ?」
大浴場で、身体を洗っていた眉村の背中を見て米倉は不思議そうに尋ねた。
彼の背中には無数の傷跡があり、最近付けられたのか赤く腫れているものもある。
「ああ、これか。これは薬師寺が昨日……」
情事の際につけたものだ。そう言おうとした時、スッコーンと何かが眉村の頭を直撃。
「!?」
驚いて飛んできた方向を見てみるとキッと睨みつけている薬師寺が居て、眉村は口を噤んだ。
「薬師寺が……なんだよ?」
「いや。なんでもない」
「?」
変なヤツだな。
事情を知らない米倉は首をかしげる。
「てめぇ、眉村! 話しやがったら、速攻で部屋を変えてもらうからなっ」
「ああ。わかってる」
米倉の視線を気にしつつ、小声で会話をする薬師寺に、眉村は小さく息を吐いた。
湯船につかりながら、どうしてこうも人がいるときと態度が違うのだと溜息が出る。
最初こそは嫌がっていたものの、最近では自分から寄り添ってくることも多い。
他人が居なければ、の話だが。
いつでも二人で一緒にいる吾郎と寿也が少し羨ましいと、最近眉村は思っていた。
もっとも、そんな事を言ってしまっては殴られるのが目に見えてわかっていて口に出すことはないが。
今日だって入浴時間が重なったのは偶然で、いつもは別々にしていることのほうが多い。
ちらりと横を見れば湯船にもたれかかり、タオルを顔に乗せている彼が居てやはり、触れてみたいと思う。
ほんの少しだけ。
水の中なら誰にもわからない。
ここにいるのは自分達と米倉だけだ。
そんな考えがふと思い浮かび、そっと近づいて後ろから手を回した。
「なっ、何考えてんだ!?」
「大丈夫。誰もいない」
「いるだろぉが!! 米倉が!!」
「見えないようにするから」
「そういう問題じゃないっ!!」
サワサワと太ももを撫で上げられ、ドキドキと鼓動が早くなった。
広い浴室には、まだ米倉が居ていつ自分達の所へくるかわからない。
そう考えると、余計にゾクゾクとしてしまう。
「離せッ……バカァツ! ぁっ」
気が付けば胸の飾りをキュッと摘まれ、身体が勝手に熱くなる。
湯船に使っている所為もあるのだろうが人前で触れられているという羞恥心がさらにいつもより敏感な反応として現れていた。
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