シン、と静まり返った室内にカリッカリッとペンを走らせる音が響き渡る。
ふと視線を移すと飛び込んでくるのはアイツの横顔。
真剣に教科書を見つめる視線は伏せ目がちで、思ったより長い睫毛にハッとする。
コイツ……前々からイイ男だとは思ってたが、やはり整った顔立ちをしている。
「……。なんだ、さっきからジロジロと。俺の顔に何か付いているのか?」
訝しげに眉を寄せ切れ長の瞳に俺の姿が映し出される。
「いや。なんでもない」
そう言うと、眉村は「そうか」とだけ呟いて再び教科書に視線を落とした。
俺たちの部屋の暖房が壊れ、部屋が水浸しになった為にミーティング室を借りてテスト勉強をしていた。
「なぁ、眉村。お前ココわかるか?」
「あぁ、この問題は……」
教科書を寄せて肩が触れる。
スラスラと模範解答をノートに走らせるその姿に、思わず息を呑む。
やっぱ、コイツ凄い。
俺が数十分悩んでもわからなかった問題をいとも簡単に解くなんて。
感心してその解答に目を奪われていると、不意に肩を抱き寄せられた。
「!」
ドキン、と瞬時に胸が高鳴る。
チラリと視線を向けると眉村は何食わぬ顔で、解いた問題の説明を始める。
俺だけドキドキしてるのが癪で、あいつの手を思いっきり叩いた。
「こういう事はしない約束だ」
パチンッと言う小気味いい音を立てて怯んだその手を振り払う。
眉村は一瞬驚いた表情で少し赤くなった自分の甲を見つめ、フッと表情を緩めた。
「何がおかしい」
「いや……相変わらずつれないヤツだと思ってな」
なんとなく鼻で笑われたような気がしてムッとする。
「まぁ、そんな怖い顔をするな。折角の顔が台無しだぞ」
「五月蝿いっ!」
頬に触れた手を払いのけ、乱暴に教科書を手繰り寄せた。
「なんだ、説明してやってるのに……もういいのか?」
「ぅ……っ」
そういえばそうだった! ついカッとなってしまった自分に気が付き、もう一度眉村の側に教科書を差し出す。
前/ススム