ミーティングルームで、今作戦会議が行われている。
俺もとりあえず耳を傾けていたが、ふとした瞬間に隣に座る薬師寺に目が行った。
すぐ横に形のいいうまそうな耳が見える。
そういえば、アイツは耳も弱かったな。
一度興味がそれてしまうと、もはや二軍監督の声は俺にはただのBGMにしか聞こえない。
薬師寺はそんな俺のことに気づくはずも無く、真剣な表情でメモを取っている。
多分違うことを考えているのは、俺と茂野だけだろう。
薬師寺の耳に釘付けになって、今、ヤツに触れたらどんな反応を示すのか?
そんな考えが頭をよぎった。
ほんの少しだけ、触ってみようか?
ドキドキしながら、薬師寺の太ももに手を伸ばす。
程よく引き締まったその筋肉がとても心地いい。
やわらか過ぎず、硬すぎず。
薬師寺はギョッとした顔で、俺を見つめた。
なんだ?
どうかしたのか?
顔をこれでもかというくらい真っ赤に染めて、俯いている。
その反応がとても面白い。
みんな監督のほうに注目しているし、俺達は一番後ろで近くには茂野と佐藤しかいない。
機嫌よく、太ももを撫でていると――。
ぎゅーっ
「っつ!!」
思い切り、手の甲をつねられた。
さすがにヒリヒリするほどつねられて、俺は自分の手をさすった。
チッ、赤くなってる。
薬師寺は真っ赤な顔して俺を睨み付けていた。
いかにも文句を言いたげなその口だが、今の俺にはその唇さえもうまそうに見える。
そういえば最近、テストだ試合だと忙しくってゆっくり過ごす機会が無いな。
久々に触った太ももの感触が、今も俺の手に残っていた。
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