人気のない廊下の片隅で薬師寺は眉村と口付けを交わしていた。
と言うよりは、眉村が強引に唇を奪っているといったほうが正しいかもしれない。
「ち、ちょぉ待て! ここ学校だぞ、何考えてんだ!」
焦る薬師寺のことなどお構いなしに、彼の手は制服のボタンを一つ、また一つと緩めてゆく。
抵抗できないように閉じた足の隙間に左足を差し込み、壁に身体を押し付けるようにして次第に露になる日に焼けていない白い肌に唇を落とす。
とたんに、薬師寺の身体がビクッと跳ね、眉を寄せて頬を上気させる。
「ば、バカ! 止めろっ誰か来たらどうする」
必死に抵抗するが、腕を押さえつけられて刺激を与えられうまく力が入らない。
つい昨日まで大型連休で逢えない日々が続いていたためか、身体は敏感に反応を示す。
久しぶりに感じる彼の唇の感触が神経を昂ぶらせ自然と嬌声が声が口をついて出た。
「ぁっ」
全身の血液が沸騰しそうなほど熱く、彼の触れた部分に集中する。
その時、誰かが廊下を足早に駆けてゆく音がして薬師寺は身体を強張らせた。
「なぁ、ココはマズイって! 眉村」
眉村はチッと舌打ちすると、制服の前を寄せてボタンを止めようとしている彼の手を引っ張り足早に歩き出した。
「おい、どこに連れてく気だよ!」
薬師寺の言葉には答えず、階段を上り辿り着いた場所はいつも二人で過ごすことの多い屋上だった。
重い扉を開くと、暖かい日差しと心地よい風が二人を迎えてくれる。
扉が閉まるとほぼ同時に、眉村は彼を抱きしめその唇を奪う。
「んっ……は……ぁ」
貪欲な熱い口付けに、くぐもった声が洩れ熱っぽい瞳で彼を見る。
「薬師寺、後ろ向け」
「はぁ!? お、おいっ!」
何の前触れもなく言われ、戸惑うまもなく壁に手をつかされて、ズボンのホックを外された。
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