ある日眉村は、学校の保健室でベッドで横になっていた。
朝から具合が悪かったのだが、無理を推して学校に行きやはりどうにも耐えられなくなって結局保健室送りになってしまった。
誰もいない保健室の無機質な少しすすけた天井を見ながら、ふうっと気だるく息を吐く。
簡易式の白いカーテンの向こうには保健の校医がなにやら書類を書いているのが見えた。
静かな空間の中ぼやけた意識で布団にもぐりこみ、ついウトウトしていた。
「……気がついたか?」
次に瞳を開けるとそこに薬師寺がいて、眉村は目を見張った。
「なぜ、お前がここに?」
「休み時間に佐藤に会って、聞いたら眉村が授業中に倒れたって聞いたから」
そう言って、一瞬だけ心配そうな顔をする。
「そうか、すまないな」
思わず口元が緩んだ眉村を見て、薬師寺はドキッとした。
「べ、別に心配してたわけじゃねぇぞっ! お前の情けない面拝んでやろうかと思っただけだからなっ!」
自然に頬が赤くなるのを感じ、それを彼に悟られまいとプイッとそっぽを向く。
そんな彼の様子に眉村は苦笑した。
「たくっ笑うなよ。元気そうだし、俺、戻るから」
スクッと立ち上がる彼の制服の裾を眉村は慌てて掴んだ。
「もう少し、いてくれないか」
いつもの鋭い瞳が緩み、珍しく弱気な発言の彼に薬師寺は「しかたねぇ」と呟いて再び腰を降ろした。
「そういえば、先生はどうした?」
「あー、なんか会議があるとか何とかで、さっき出て行った。」
薬師寺の言葉を聞いて、眉村はふーっと息をついた。
静かな空間にしばしの沈黙が訪れる。
「熱、高いのか?」
ふいにコツンとおでこをくっつけられて、眉村はドキリとした。
彼にその気がないのは判っていたが、堪らず両手で頬を包み唇を塞いだ。
「!!」
薬師寺は慌てて身を引き、赤い顔をして眉村を睨みつけた。
「てめっ、何するんだ!? 病人のくせに!!」
それに構わず、腕を引っ張りもう一度深く口付ける。
「んっ!」
グイッと力いっぱい引き寄せて、寝ていたベッドに組み敷くと薬師寺はみるみるうちに真っ赤になった。
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