「部屋を変えてくださいッ!!」
2軍監督の早乙女静香の午後の優雅なひと時は、突然やってきた訪問者の言葉によって打ち崩された。
「いきなり、何を言い出すのよ?」
足を組み、ティーカップに口をつけながら珍しく興奮気味の彼に視線を送る。
「俺、もうあの部屋はイヤなんです。だから部屋を変えてください。」
「理由は何?・・・・・きちんとした理由が無ければ簡単に部屋を変えることは出来ないわ。薬師寺君」
「そ、それは」
冷静な口調で言われ彼は一瞬たじろいだ。
まさか、相方の執拗なスキンシップに嫌気がさしたとも言えず言葉に詰まる。
「眉村君と何かあったの?」
「・・・・・・っ」
答えられない薬師寺の態度に、静香は肯定だと取った。
「そりゃ、あの子は無口だし愛想は悪いかもしれないけどそんなに嫌がること無いじゃない。彼の何が気にならないのよ」
静香の言葉に、彼は深いため息を付いた。
(違うぜ監督! アイツは、二人っきりになると毎晩のように襲ってくる野獣のようなヤツなんだ!・・・・このままじゃ、俺の身がもたねぇよ)
「理由は言えません。・・・とにかく2,3日だけでもいいですから、お願いします」
「そうは言っても・・・・。誰かとトレードしなきゃ部屋は空いてないし」
切羽詰った様子の彼に、静香は何か深刻な悩みがあるのかもしれないと思い頭を悩ませる。
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