ある日、薬師寺は監督の早乙女静香の部屋を訪れていた。
「どーして、俺がそんな事しなくちゃいけないんですか!!!納得できませんッ!」
彼が猛抗議しているのは、今度やってくる1年の特待生たちのためにやる余興についてだった。
「だから、何度も説明したじゃないの!この間公平に引いたくじであなたが当たったの!監督命令ですから、絶対に従ってもらいます!」
(うーッ・・・職権乱用だぜ・・・)
「なにか言ったかしらぁ?薬師寺君・・・」
「い・・いえ・・・何も・・・」
不敵に笑う静香に、薬師寺はゆるく息を吐いた。
「去年の千石君も、裸踊りちゃんとやってたでしょ?・・・まぁ、運が悪かったと思うのね。」
自分達が、特待生として入寮したときも、歓迎の宴が催されその余興で千石が裸踊りをやっていた。
当時は、日本一の海堂にもバカ(失礼)はいるもんだ・・・などと嘲笑っていたのだが、その一年後にまさか今度は自分が見世物になるとは夢にも思っていなかった。
しかも、今年のテーマは女装。
薬師寺の気分は一気にブルーになった。
(まぁ・・・裸踊りよりは・・・ましか・・・。いや・・どっちもどっちだな・・・。)
自分に拒否権はないといわれ、ふうっと深いため息をつく。
「ま、諦めて兄さんのとこへ行ってらっしゃい♪ 出来上がり楽しみにしてるわね☆」
不敵な笑みを浮かべ、さっていった静香を見つめながら、薬師寺は深い深いため息をついた。
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