眉薬 他
LoveSick
「キスくらいなら……構わないか?」
耳元で甘く囁き、ふぅっと生暖かい息がかかる。
「……一々聞くな!」
そっぽを向くと顎を撫でられクイッと持ち上げられる。
再び視線が絡み、俺はそっと瞳を閉じた。
「薬師寺〜、部室の鍵持ってないかな? …………っと」
唇が触れ合うまであと数センチ。
突然開いたドアに、パッと離れる俺達。
「……どうやらお邪魔だったみたいだね」
腕を組み、佐藤がニヤリと笑い静かに部屋を出て行った。
何度も寸止めをくらい燻った気持ちを抑えるのは大変で喉を掻きむしりたくなる衝動に駆られる。
「はぁ……」
同時に洩れた溜息が失笑に変わる。
「今日も無理そうだな」
眉村のポツリと呟いた言葉がやけに大きく耳に響いた。
そう……ここの所、いつも肝心な所で邪魔が入り何度もお預けになる日々が続いていた。
気まずい沈黙に耐え兼ねてか、眉村は緩く息を吐いて自分の部屋に戻って行った。
「はあ……。このままじゃ、欲求不満になりそうだぜ」
ベッドに力無く倒れ込み窓から差し込む西日を手を翳して遮断する。
共同生活をしてるんだから仕方ないと言えば仕方ない事なんだが……。
眩しい光を手で遮断しながら俺はもう一度ため息をついた。
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