眉村SIDE
ミーティングが終わると、薬師寺は逃げるように渡嘉敷たちの部屋に遊びに行った。
まぁいつもの事だし、あまり気にしてないが。
廊下を抜けて、自分の部屋に戻る。
なんだか異様に蒸し暑い。
クーラーを入れたが、どうにも点かない。
壊れたのか??
とりあえず監督に報告に行ったら、一言。
「もう、だいぶ夜涼しくなってきたから、クーラーは午後から切ることにしたの。もちろん、廊下もすべて消えるから。あきらめなさい」
監督の言うことは絶対だ。
黙って部屋を出ると、俺のほかにも苦情を言いにきたやつが集まっていた。
「よぉ、眉村んとこもクーラー止まったのか?」
「止まったんじゃなくて、全室とめられたんだよ」
「な、なにぃっ!?」
俺の言葉に、茂野は素っ頓狂な声を上げた。
俺が事情を話すと、みなあきらめて戻っていく。
ただ一人、茂野だけが監督室に直談判しに向かった。
無駄だと思うが、監督を説得しろよ。茂野。
俺は、部屋に戻ると窓を全開にした。
ムシムシする部屋の中に秋の風が入り込む。
けれど、その風は温風のように生ぬるく心地いいものとはいえない。
そうこうしている内に薬師寺が戻ってきた。
「珍しく早い戻りだな」
てっきり消灯まで居ると思っていたのに。
「お前のせいだ!」
「は?」
「お前が、いっつも襲い掛かってくるから、米倉に声聞かれてたんだぞ!」
「……」
どうやら、米倉に注意されたらしい。
俺も、何度か注意されていたが、そんなことを言われても抑えられるものでもないし。
「まぁ、そうカリカリするな」
「誰のせいだと思ってんだよ!」
それは、薬師寺の声がデカすぎるからいけないんだろう?
そういいたかったが、止めた。
余計なこと言って殴られるのはごめんだからな。
「すまん。悪かった」
「お、おう」
俺が謝罪の言葉を口にすると、薬師寺は少し戸惑った顔をした。
なにか、おかしなこと言っただろうか?
まぁいい。せっかくの二人っきりなんだ。
一緒にゆっくり過ごすのも悪くない。
俺はベッドの上で壁にもたれかかって、薬師寺に手招きをした。
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