米倉にそう振られ、俺は適当に相槌を打った。
「眉村も、薬師寺もすっげぇよ」
「別に。テスト中にヤマ張って集中的にやってるだけだ」
俺がそういうと、米倉がニヤッと笑った。
なんだよ、気持ち悪いヤツだな。
「そういえば、テスト期間中はお前らの部屋から音が聞こえてこないもんなぁ」
「!?」
音!? 音って、何の音だ。
ま、まさかっ!
震える声で尋ねれば、米倉が呆れたように声を上げた。
「とぼけるなよ。薬師寺。いっつもなに見てんのかしらねぇが、ビデオの音うるさいんだよな。お前ももう少し音量下げるように眉村に言っとけよ」
「なに? 二人して、何のビデオ見てるって?」
渡嘉敷が興味深々に聞いてくる。
「だから、AVだよ。もう、夜中にすっげぇの」
「!!!」
「よ、米倉……お前聞いてたのか」
「別に聞きたくて聞いてるわけ無いだろ? ココの壁薄いんだから、イヤでも聞こえるぜ」
米倉の言葉に俺は眩暈がした。
幸いなことに、それが俺の声だとは気づいていないらしい。
(AVと間違われているのも、シャクに触るが)
「薬師寺、顔赤いぜ?」
「本当だ〜」
「うるせぇっ」
俺はとにかく恥ずかしくって、どうしようもなかった。
この場の空気が心臓に悪い。
「俺、用事思い出したから帰る!!」
この場になんとなく居づらくて、俺は渡嘉敷の部屋をあとにした。
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