眉薬 他
LoveSick
「おい、眉村。……ちょっとそこに座れ」
「?」
「いいから、座れ」
不思議そうに薬師寺の指定したフェンスに座りもたれかかると、その眉村に彼は身体を預ける。
「薬師寺……」
「今からしばらくお前は俺の壁代わりだ。動くなよ」
肩に頭を乗せて、チラッと相手の様子をうかがうといつもの鋭い瞳はなくわずかに口元が緩んでいるような気がした。
そっと眉村の腕が絡まり、抱きしめられると互いの鼓動が混ざり合い心地よい感覚に包まれる。
「薬師寺」
「なんだ?」
「好きだ」
見上げた瞼の上に口付けされて、頬がほんのり赤くなる。
薬師寺は返事の代わりにぐいっと彼を引き寄せて、その唇に口付けた。
暖かい日差しが二人を優しく包み込み、見つめあいながら口付けを交わす。
若葉萌える頃の、ある昼休みの出来事だった。
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